同人小説書き『植栖価値(うえすかち)』のブログだよ。二次創作とかオリジナルとか色々やるよ。でもブログにはあんまり長いのは載せないと思います。変なのを書きがちだよ。最近は主にTeitterに生息中。TitterID:【lost_taboo】
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いつでも物語はここから始まる。
『今日も魔理沙が図書館にやってくる』――。
だから私はそれを『もてなす』。
毎日毎日飽きもせずに私はそれを繰り返す。
その度私の心は壊れそうなほど切なくなるというのに――。【PLAY WITHIN A PLAY.】
「なあに? また来たの?」
パチュリーは扉を見るなり小さく一つため息を吐いた。
「云っとくけど、もう貴女に渡すような本なんて無いわ、さっさと帰ったら?」
「ははは、そうつれなくするなって。今日はお前とお茶でもと思ってな、ほら、霊夢んとこから好い茶葉もパクッてきたんだぜ……つっても古くなってるかもだがな」
もう一つため息をついて彼女は本を閉じた。払い切っていなかった埃がポンッと舞い、それを吸い込んだ少女は小さく咳ばらいをした。その本を傍らに置く。
「……そんなのより美味しい紅茶を御馳走するわ。来て」
パチュリーは机を立ち小テーブルの前の椅子を一つ引き、「座って」と云う。その向かいに座り、小悪魔を呼び出す。すぐさま小悪魔は現れ、「お呼びでしょうか」、と。「この間仕入れたとっておきの紅茶があったでしょ? それを二人分お願い」。小悪魔はパチュリーと、その向かいの席を一瞥し、少しだけ眉を顰めた後再びパチュリーの方を向き直り、「かしこまりました」と云って早足にその場を去っていった。
「ごめんなさいね魔理沙。あの娘まだ貴女のことを警戒してるらしくて――」
「私は気にしてないぜ、なにいずれ馴れるさ」
「そう……なら好いけど」
少女は少しだけ頷き、紫の髪に付いた埃を取りながら何気ない様子で云う。
「――それより魔理沙、貴女あの七色とはどうなってるの?」
「アリス? いや、どうにもなってないけど……。どうしたんだ、いきなり」
「なんでも無いけど……。紅白巫女とは?」
「な……なんだよさっきから怖いな。霊夢? ……まあしばらく会ってないな。――というか、お前は何があると思ってるんだ?」
「う……。いや別に。ただ――」
パチュリーが口ごもる。何かを云いかけ、止まる。
「その……」
「ああなんだ。ははっ! 判った判った不安なんだな? 大丈夫だよ、私はお前を裏切らないさ。なんだそんなことに怯えてたのか? くくく……、可愛いなあお前は!」
「そ……なっ……! ちが……わ、無いけど。でも……、貴女と居ると小悪魔も好い顔しないし、美鈴にだって何度も注意されたけど、でも……」
「恋路に障害は付き物ってな。なあに、私が居なくなるのはお前の想いが途切れた時だけさ。それともそんなことがあり得るのかよ?」
「……無い。絶対無い。そんなこと……」
「だろ? じゃ、大丈夫だ。ふふん、なにお前が信じている限りは私はお前の前からは絶対に消えたりしないぜ。そこだけは信じていい。くくく、私ほどの正直者はそうは居ないぜ?」
パチュリーのため息。「よく云うわ、嘘しか吐いたことの無いくせに」
「私だってため息くらい吐くけどな」
「それも嘘でしょう?」
「私は嘘つきだからな」
「嘘つき……」
パチュリーの目に涙が浮かんだ。目を伏せ唇を噛み、固まる。
落ちる涙。小さく聞こえる鼻をすする音。控えめに聞こえる嗚咽の声が図書館のしじまに深く沁み渡る。沈黙。
――沈黙。
何も一言も無い。ただただ静か。
やがて嗚咽も治まり小さく鼻をすする音。パチュリーは目を上げる。
「ねえ……」
それは小さな声、振り絞るような声、――懇願の声。
「お願いだから、絶対居なくならないで?」赤くなった目で前を見据える。その視線の先は――。
「私はもう貴女――魔理沙が居てくれないと駄目なの。たとえ貴女と私では遥か果てまでも寿命の差があったとしても、それでも私は私の寿命の欠片しか居ない貴女の事が絶対に忘れられそうもない。――でもね、それじゃ嫌なのよ。……違う。もちろん判ってるのよ、死別は絶対に避けられないなんてこと――。貴女は人間だもの。でも――、だからせめて――」
「もうやめて下さい!」
振り向けばそこには小悪魔の姿が。
物語はここで終わる。
【CURTAIN.】
広い広い図書館の片隅。居るのはパチュリーと小悪魔の二人だけ。
小悪魔の持つティーポットの乗った銀盆が小刻みに震え、それは怒りのような苦しみのような――耐えがたい切なさのような。
うつむく。
そして小悪魔は涙交じりの言葉を発する。終わりの言葉。
「もう……、魔理沙さんは居ないんです――」
終幕。
【THEY LIVED HAPPILY EVER AFTER.】
小悪魔の言葉の意味を私が理解しないわけがない。だけれど自分の主の慰みを中途で終わらせてしまうのは感心しない。だから私は小悪魔に云う。出来るだけ優しく――。
「ねえ――小悪魔? あなたが私の身を案じてくれていること、私はとても嬉しく思ってるわ。でもね、ダメなのよ。魔理沙は私に必要なの、私の一部なの。――だから、せめて魔理沙はここに置いておかなきゃもう私は耐えられないの――。判ってくれる……?」
「でも……、もう魔理沙さんは……」
「五十七年と三ヶ月と十七日前に死んでるわ。そんなの判ってる。だけど私はこうして生きてるの。あの頃と何にも変わって無いの。魔理沙だけ変わっていっちゃったの。――ううん、人間はみんな、変わっていっちゃったわ。だけど私はあの頃のまま。人間が変わっていくのは当然だわ。でもね、変わっていくのが当然だけど、魔理沙は――、魔理沙だけには何にも変わってほしくは無かったのよ」
「パチュリー様……」
小悪魔は憐れむような目で私の事を見ている。それでいい。この位畳み掛けて云わないと私はきっと小悪魔に云い負けてしまう。内容なんて無い方がいい。私は可哀想な人でいい。小悪魔が静々と部屋から出ていく。それでいいのだ。
私はふいと魔理沙の方を見る。が、そこには既に魔理沙は居ない。やはり今日はもう戻ってきてはくれないだろう。また明日会える。私は立ちあがり部屋の片隅にある小さな化粧棚へ行く。鏡が見たいわけじゃない。化粧棚の下部の両開きの戸を開くとそこにはただ一つ、白い日本風の蓋つきの壺がある。丸みのあるその壺がピカピカと輝いているのは私が毎日欠かさず磨いているから。私はそれを取り出し抱きかかえ壺の中に居る魔理沙を想い泣く。もう五十年以上もこうしてきたけれど未だ涙が枯れる様子は無い。
――久々にアリスのところにでも行こうかなと思う。あいつはあいつでまだ若く幼い時の魔理沙の人形を作っていて、以前それを見せてもらった時それは確かにあの頃の魔理沙にそっくりで思わず涙を流してしまったけれど、あいつも云っていた通りあの人形には心が無いからいくら魔理沙そっくりに動かしたところでそれは偽物でしかなくて、だからその魔理沙人形がアリスとどんなことをしたからと云って、アリスにどんなことをされたからと云ってそれは魔理沙がどうこうされたわけではないから私にはそれ程関係のないことなのだけれど、せっかく私は本物の魔理沙を持っているのだからそれを見せびらかしに行くのもいいかもしれない。――それに私だって無為にこの何十年も泣いて過ごしてきたわけじゃない。アリスの人形と私の知識、それに魔理沙の骨さえあれば、或いは魔理沙の『心』を今のこの世に蘇らせることも可能かもしれない。もちろんそれが出来る確証もないけど、そんなことを期待して明日アリスの家に行ってみるのもいいかも知れない。
『魔理沙』と『私』。二つのお人形を使った独りきりのおままごと。ただ私は『本物の魔理沙を持っている』ということが心の支えになっていて、逆にアリスは『魔理沙の写し身を持っている』ということが心の支えになっていて、やっていることは二人とも何ら変わりなく、ただただ独りで手に人形を嵌めて遊んでいるだけなのだから、それならいっそのこと写し身に本物を乗り移らせてそのまま一人の正真正銘の魔理沙を創ってしまうのもいいかも知れない。今の動物のような思い通りの魔理沙よりも、思い通りでない魔理沙を一人創り上げて昔のように二人で取り合ってみるのもきっと楽しいだろう。 そんな事を考えると、明日の事が少しだけ楽しみになった。
【THE END】
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